4月5日から4月30日のこと


2002/04/30               白い塔

 信じられるものがない。僕はどうしようもない。
 薄味な毎日。似たような曲。うすっぺらな僕。似たような僕。
 どうしようもない。どうしようか。答えようもない。死にようもない。生きるしかない。
 笑うしかない。がんばるしかない。

 今日はとてもいい天気だった。顔をあげると、高くそびえる塔、という形容がぴったりな白い煙突が見えた。その姿はまるで、一年前に模写したキリコの絵のようだった。僕は空を眺めながら、信号が青にかわるのを待った。
 それは、とてつもなく天気のいい日のことだった。


2002/04/27               怒るくらいなら読まないで。

 友人がドラムを始めるという。この三年生の受験生が。今年から軽音楽部に入ってドラム。僕は「お前それかなり無謀だろ」「勉強しなくていいのかよ」「てゆーかこんな環境じゃドラムの練習に集中できないぞ」「とにかく無理だよ」と得意の繰り返しばかりの忠告をしてやったが、奴は「大丈夫だよ」「なんで?」「だっておれもう勉強捨ててるもん」ああ、そうきたか。確かに、その友人の成績はほぼオール2だ。そして僕は少しだけ、彼女のことをうらやましいな、と思った。
 僕の成績は中の上くらいで、志望校は結構な有名校だ。まぁ、それにはまだまだ程遠くて、もっと勉強しなきゃならない。そう、勉強しなきゃならないんだ。僕は勉強が嫌いじゃないけど好きじゃない。家では親が心配するほど勉強しない。しないのに何故か問題ができてしまう。できてしまうからもっとやらなきゃならない。僕は中途半端なのだ。
 僕自身、イイ学校へは行きたいと思う。光ヶ丘高校いくより、慶応義塾にいったほうがいいに決まっている。勉強しないとなぁと思う。そして僕には志望校に受かる可能性があると思う。だけど、僕は彼女をうらやましがるのだ。勉強がぜんぜんできなくて、「もういいや」とそれを捨てて、自分の好きなことに夢中になれる彼女は、なんて希望にあふれてるんだろう。もしかしたら彼女はバンドを組んで大成功するかもしれない。未来のヨシキになれるかもしれない。絵も得意だから、漫画家になれるかもしれない。それに比べて、僕はどうだ。僕は何をやっているんだ。なんでこんなに不安定なんだ。なんでなにも信じられないんだ。なんで何もできないんだ。ちくしょう。ちくしょう。


2002/04/24               僕は思う・2

 ぼやけた月がきれいなこととか
 煙突から煙が出ていることとか
 日が長くなったことに気づくのは
 きっと
 僕が君の一番じゃなくなったことと

 同じように

 何気ないことで
 それでいて
 気づくとどうしようもないことなのだと
 思う

 三十階立てマンションのそばに見える
 丸い黄色いぼやけた
 月は
 まるで君のようだと
 思う


2002/04/22               いつか、年老いた僕らは。

 今日は塾にいった。
 英語の時間中にプリントに『NO MORE 悩み無用! あなたの髪きっと生えてくる。信じて喜び抱きしめよう。リーブ is wonderful!』と書いていたら、ふと「まわりで勉強している奴らもいつか禿げるのだろうか」と思い、一番禿げそうなハジメに「お前禿げると思う?」って聞いてみた。
 「おれは禿げねーよ」後ろを振り返って反論する。するとマサルもこちらをみて「だってマキさん(ハジメのこと)のファザーふさふさふっさーるだもん」僕は更に聞く「じゃあグランパはどうなの?」「じいちゃんはー、あー、つるつる」「じゃ、やっぱやばいんじゃん」「いやでも、おじいさんになってふさふさでもちょっと困るだろ!」あぁ、なるほどなぁ。
 そうか。おじいさんになるんだな、みんな。僕はハジメとマサルがおじいさんになった姿を想像しようとした。けれど、無理だった。
 想像できない五十年後の彼らが現実になるとき、僕たちはもう、まったくの赤の他人になってしまっているのだろうか。今は一緒に同じ教室で勉強して、お互い笑いあっているのに。五十年後には。いつか。年老いた僕らは。
 僕には想像できなかった。
 僕には想像できなかった。


2002/04/20               You Gave Me Something

 僕の家には画集がある。ニューヨークの現代美術館の絵が日本に来たときの、美術展の画集。僕が初めてまともに見に行った、美術展の画集。僕はたまにそれを見る。ミロの絵を見て楽しくなり、クレーの絵を見てため息をつき、マグリットの絵を見て不安になり、モンドリアンの絵を見て落ち着く。
 だけどこう思うのは僕だけなんだろうな。この気持ちは僕だけのものだから。まだ僕は僕以外の人の、この絵たちに対する感想を聞いたことがない。他人がどう言おうと、定説がどうであろうと、この僕の気持ちは変わらないでいてほしい。
 ところで、僕は特にクレーの絵が好きです。色が綺麗で、はーってかんじになります。あの人の絵が家にひとつあったら、毎日和み系なかんじで過ごせるだろうな。

 なんか知らんが友人に「フォック・オフ!」って言う夢を見た。謎だ。

 ■ リンクに偽星を追加。お互い頑張りましょう。


2002/04/18               M・I・L・O、ミロ〜♪

 僕は今、ある飲み物(の素となるもの)の入ったビンを目の前にしている。
 ココアにも似た味、そして牛乳に混ぜることによって発揮されるその豊富な栄養分。
 子供たちに、そして一部の大人たちにこよなく愛される飲み物。
 その名は。

 M・I・L・O、ミロ

 ついにこの日がやってきました。
 僕はこれから未知の領域へと足を踏み入れます。
 初体験の今日、当初の予定はまったく無視し、カルピスでいくことになりました。
 理由は兄が昨日やってみて「飲めるよ」と言っていたからです。
 ああそうさ! 俺は怖いのさ! 怖がるのがいけねぇっていうのかこの野郎!!
 BGMはkornの5th『Untouchable』リーク版でお送りします。(全然駄目だ)

 最近サイトの趣旨が変わってきている気がしないでもないけど、まぁやりたいことやってられるうちが華だからさ。

 それでは始めましょう。
 まずコップにカルピスと炭酸を入れる。普通ですね。
 そして少し味見。む、ちょっと濃いな。
 もう少し炭酸を入れる。よし、これでオーケー。

 なんだかこのサイトのデザインでこういう文体でやるとかなり不恰好なような気がする。

 それはともかく、さて・・・・・・いよいよ、ミロ投入です。
 コップの容量の関係上、カルピスは少なめなのでスブーン大盛2杯くらいかな?
 どばーと入れます。どばー。

 ちなみにこの文リアルタイムで書いてますから。

 色はどうみてもミロ色。
 ただ少し、ミロ色になった炭酸の泡が上のほうに溜まっていて、不信感を煽ります。
 匂いはミロの香りの裏にカルピスの冷たい匂いがするかんじ。本当にそうなんだから仕方ないでしょ。
 飲む前にもう一回かき混ぜてみる。
 なんだか茶色い泡がエスプレッソ風味でおいしそうなんだけど・・・・・・
 さぁ、飲むぞー。
 ごくり。

 き、きききき気持ち悪い!!

 いや思ったよりまずくはないんだ。まずくはないんだけど、なんというか、気持ち悪い!
 2口目はないかんじです。
 何故って、まず、上のエスプレッソ風になった炭酸の泡はものすごいミロの甘ーい味がする。
 そして、その下のカルピス本体の部分は、ミロの甘ったるさとカルピスの爽やかな甘さが混ざり合ってない味がする。
 それぞれひとつなら、まだ飲めないことはないんですが、それが混ざり合うともう!

 気持ち悪いよぅ!!

 しかし僕はこれを飲み干さなければなりません。
 自分のつくったものには最後まで責任をもたなければなりません。
 そして僕はミロカルピスを飲みきりました。
 何度もくじけそうになりました。
 しかもこの文章書いてたら頭痛くなってきました

 あ、兄貴の嘘つき・・・・・・

 ■ 元祖ミロドランカーは鈴木JAPANの鈴木さんです。


2002/04/16               いつもとは違う勢いで

 前々回のログ保存しておくの忘れた。まあいいかどうせ場つなぎだったから。

 人間ってのは、本当によくわからないもんだなぁ。とつくづく思う。ちなみにこの「つくづく思う」っていうのは文章を書くときの自分の癖のようなものだと自分では感じていますが案外そうでもないみたいでつくづくブルーです。
 それはともかく、他人ってのは本当によくわかんねぇなぁ。とつくづく思う。なんつーか、「さようなら」って言われたから僕は「うんじゃあね」って言っただけなのに「あなたなんて大嫌い!」て殴られたぜ。うわぁ。
 みたいな。
 しかもその後「あなたは私のことなんて何もわかってないのよ!」とかいいながら雨の坂道を駆け下りていく彼女。呆然とその後姿を見つめている僕。ああそれでもおれぁあの子が好きだぜ。
 みたいな。
 なんかだんだんよくわからなくなってきましたが、つまりはそういうことです。
 最初は「用事があるから」って言ってたくせに「えぇ〜帰っちゃうのぉ?」って五回ぐらい言われただけでお前はその用事をすっぽかすのかと。お前本当にその用事ってものは存在するのかと。問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。お前、引き止められたいだけちゃうんかと。
 あぁ問い詰めたい。朝になるまで問い詰めたい。

 昨日買ったミロはまだ牛乳にしか入れてません。
 今日も挑戦はできなさそうです。
 一応初心者なのでミルクティーから始めてみようかと思っているのですが、やっぱ芸がないですかね。
 甘くなるだけですかね。
 わかりましたよ。レモンティーなら文句ないでしょう。文句ないですよね?
 ただ僕はなんとなく未知の世界の味がするような気がしますが。
 
 ・・・・・・・・・・・・

 ごめんなさい。
 やっぱミルクティーで。ええ。


2002/04/14               SUPER TRAPP/中古の円盤

 どうも調子が悪い。ギターのチューニングが微妙に合ってない状態で演奏しているような、独特の気持ち悪さが始終ついてまわる。ワードで組んだHTMLをメモ帳で開いてみたときみたいにごちゃごちゃして、本文のまわりが余計なものでいっぱいになっている。
 いつも降ろしているブラインドを上げて外を見ると、ぐるりとマンションに取り囲まれた僕が窓に映る。カーテンで目隠しされた窓の向こうにも僕と同じような人がいて、僕と同じようなことを感じているんだろうかと思うと、なんだかこのまま飛び降りて血でも吐いてみたいような気持ちになってくる。だけど僕はそのかわりに、寝っ転がりながら曲を聴いて少しだけ歌う。
 この街の特別なバイオリズムに合わせて、僕はここにいる。

■ リンクに八頭身と1さん愛のFlash『弱腰戦士マカァー』、面白ショート・ショート『プラッチック』追加。


2002/04/10               煙の出ない白い煙突の話だけで

 やばい。ごめんなさい。昨日の日記で原田宗典さんの名前を間違えてしまいました。「むねのり」が「宗則」っていう漢字に脳内変換されてしまい間違えてしまいました。ごめんなさいごめんなさい。とりあえず直しておこう。

 「今日はこれを書こう」と休み時間の喧騒のなかで思いついたんだけれどすぐ忘れてしまった。そのあと下校途中「やっぱりこれを書こう」と思っていたのにまたまた忘れてしまった。どうなんだもう。もうもうもうもう。クローン牛何気にかわいいぞもう。クローンについていろいろ言う人はみんな、『キノの旅』3巻読んでほしいな。賛成の人も反対の人もみんな。クローンでも生まれてしまえばみんな生きる意志があるって。なんかよくわかんないけど読んでほしいんだ。「だからどうした」と怒鳴られるかもしれないけど、読んでほしいんだ。読んでほしいんだったら。
 自分のことで書くことがろくにないのでどうしても本の話になってしまいます。ああそうだなぁ。今度から思いついたらメモに書いておこう。うん。決定。

 煙の出ない白い煙突の話だけで原稿用紙5枚は軽くいけるような気がします。気がするだけです。

 2年生の教科書とかプリントとかまったく整理してないんだけど。そのことで今日は親に小言を言われるし。だってどうせ英語と数学と国語の教科書以外全部そのまま使うんだからさー。このままでいいでしょう、と。たまには愚痴ってみてもいいでしょう、と。


2002/04/09               It's gonna go away

 新学期が始まった。クラス変えも担任変えもとくに僕には関係なかった。なんというか、味気ない一年間になる臭いがもうぷんぷんしていた。ただ修学旅行さえなんとか乗り切ってしまえばあとはどうにでもなるだろうということはわかっていた。
 そういえば今日は入学式だったんだ。式辞で「勉強は大変ですけれど、頑張っていればなんとかなります」とPTA会長が言っているのを聞いて「死ね」と心の中で呟いた。「なんとかなる」なんてオレの一番嫌いな言葉じゃねぇか。くそ。たまに使っちゃったあとものすごく後悔して「オレ死ね」とか呟きたくなって思わず呟いてしまう言葉の代表格だ。あぁいやだな。

 今日久しぶりに原田宗典の『平成トムソーヤ』を読んだ。いま読んで初めてなんだか滝本竜彦と似ているな、と思った。文体というよりも、ダメ学生がいろんなことで感化されて結局は障害を乗り越えて何もない日常では得られないようなものをゲットするっていう、話の流れが似ている。いやまあ要するに女の子ってことなんだけれど、それによって変わっていく主人公っていうのが、いいなぁ。ただ大きく違うのは滝本の主人公はふたりとも自殺願望をもっていたことだ。女の子を助けるためというよりは、自分のために敵に向かって突っ走っていた。そんなところも好きだ。
 つまり滝本竜彦をみんな読みましょうということです。少し勢いで書いてるかんじがして、ほかの作者さんと比べるとちょっと・・・といったかんじかもしれませんがライトノベル読める人ならぜんぜん大丈夫です。むしろラノベで出したほうが良かったんじゃないかと思う今日この頃。

 ■ フレーム廃止。他に特に変わったところはないですが。

2002/04/07               アンドロイドは電気羊を数えて眠るか?

 昨日の爆笑オンエアバトル第4回チャンピオン大会はとても面白かったです。とくに陣内さんの羊が。すごく面白いし、新しいやり方だし。ハリガネロックと同じくらい好きだなぁ。ところでハリガネロックの大上さん、ステージと普段じゃ全然顔違うんだなぁ。ステージを降りるとすごく優しくてかっこいい顔になって、全然変わっちゃう。多分あの顔なら会っても気づかないだろうな。あんなにかっこよかったなんて。知らなかった。まあそれはともかくハリガネロック優勝おめでとうございます。やっぱユウキさんの毒舌が深夜番組向きなのかなぁ。面白いけどさ。

 一日中椅子に座って作文。作文。作文。
 僕はキーボードで打ったほうがなんだかいいかんじの文章が書けるというパソコン依存症なので、パソコンも一日中起動したまんま。
 一瞬電気代の恐怖が頭をよぎるけれど、そんなもの今日の夢に比べたらどうってことないやぁははははははは。と笑ってごまかした。確か馬鹿なチビのおかげで凶悪なモンスターがオリから出てしまって、それに追いかけられる話だったような気がする。
 ところで、夢って同じ風景が何度も出てきたりしませんか? 僕の今日の夢には、昨日の夢にも出てきた隠し通路が再登場しました。あとよく出てくる例としては、怪物の子供がたくさんいる公園とか、近所の実在する園にもう1個できた図書館とか。あそこって何故かアディダスのジャージがいつも売ってるんだよね。なんでだろ、図書館なのに。まあ夢だし。
 夢がおかしいのは眠るのを楽しいことにするためだ、とスナドリネコさんが言っていた。そうしたらみんなちゃんと眠るだろ。確かに。けど怖い夢も見る。あれは多分お化け屋敷と同じものなんじゃないかな、と思う。スリルを感じるのは体にもいいって、誰かが言ってた。
 今までで一番怖かった夢は、首を撃たれる夢です。すごくよく覚えてる。僕はその夢の中で僕じゃない男になっていて、もうひとりの男とともに追われている。追ってくるのは金髪のオールバックの男。手には拳銃を持ってる。実は追われる理由を僕は知っていた。隣で一緒に走る男のせいだ。こいつは隠しごとをしているけれど僕は知っている。その隠し事が追われる理由なのだ。そしてなんとか男をまいた僕らは小さな小屋に入る。そこで僕は、男にお前があーでこーしたから追われてる、そうなんだろ? と言ってしまう。たじろぐ男。そのとき、金髪の男がドアを蹴破って入ってきた。同時に僕の脚を撃つ。バランスを崩した僕は倒れる瞬間、驚いてこちらを見つめる男を見たような気がした。そして倒れている僕に、金髪の男は銃を向ける。僕はおなかを撃たれると思って無意識に手で意味のない防御をした。なのに、弾は僕の予想に反して僕の喉を貫通する。口を閉じていない風船のような音を立てて、喉から空気が抜けていく。あぁもうダメだ。そう思って僕は息を吐いた。どんどん苦しくなっていく。苦しい。苦しい苦しい苦しい苦しいー!
 ・・・と、まぁそこで目が覚めたわけですが、起きた後も首のあたりがスースーしたりなんかして、ものすごく怖かったです。
 やっぱり、夢って面白いなぁ。今日もちゃんと寝ます。
 その前に、作文終わらせてないと・・・


2002/04/06               とんがりコーン

 久々にkornの『issues』を聴いた。
 僕が初めてkornを聴いたのは、確かこのアルバムだったと思う。1曲目の『Dead』が始まると、なんだかその時のことが思い出されるかんじだ。
 図書館で借りた。その頃洋楽はあまり聴いていなくてお金を払って借りるのはもったいなかったし、それ以前に近所のレンタル屋には洋楽のCDなんてすごいちょっとしかなかったし。というか、出会いが図書館だったのだから図書館で借りるのが当たり前だろう。僕は不思議なジャケットに惹かれてこのCDをカウンターに差し出した。
 外見は傷だらけで、相当多くの人に借りられているようにも見えた。少し分厚いのはCDが2枚入っているという証拠だ。そうか、あのパタパタやって遊べる2枚組みか。そう思いながら中を開けてみると一枚目のCDがするっと床に落ちた。CDを留めるところのツメが2、3個折れていた。慌ててCDを拾い、プレイヤーの中に置く。フタを閉じて、再生ボタンを押した。
 音はだんだんと大きくなっていく。まず最初にドラムの音が聴こえる。そしたら、聴きなれない音がスピーカーから滑り出してきた。な、何だこれは? バクパイプか? バグパイプだ。バグパイプかよ。と思っているうちにささやくようなボーカル。それにおそらく同一人物と思われる、遠くに向かって歌っているような歌声が重なる。しかし、その声は誰にも届かなかったのか、「あぁ」という嘆きのように歌は下がって、終わった。
 鬱っぽい。と、僕は1曲目と2曲目のあいだで思った。2曲目のイントロが始まる。静かなギターだ。ジャケットが気に入って借りたからなやっぱ中身はそれなりなのかもしれないまあしょうがないか。一瞬のうちにそんなことを考える。だがしかし、 その予想はもうかなり180度正反対に裏切られたのだ。
 僕が漠然とした何かを思うその一瞬で、曲にはザクザクしたギターと、バチバチいうベースと、カンカン抜けるドラムがいっせいに音を鳴らし始めた。うわぁなんだこれは。一体僕はなんでこんな歌を聴いていたのだっけ? と少し錯乱気味になりつつ、心の中で「うわぁうわぁ」を連発した。少し音が鳴り止むと歌が入った。これがまた1曲目とは全然違うんだ。きれいじゃないけどいい声なんだ。しかもきれいな声も出ちゃうんだ。なんなんだこの歌い分けの豊富さは。本当にひとりで歌ってんのかこいつ。すごい。すごいすごいすごいすごいすごい。
 と、2曲目『Falling away from me』を興奮気味に聴きおえた頃には、僕はもうkornの音が大好きになっていた。いつだって一番ボーカルが気に入る僕だけど、kornは全部好きだ。ボーカルもギターもベース ドラムも全部が好きになってしまった。全部大好きだ。
 こんな僕はその後彼らの1st『korn』を聴き、「うわぁ」「すげぇ」を更に連発することになるのだった。

 ■ リンクに東京家出少女追加。


2002/04/05               ぼくは思う。

 パソコンの前に座ってキーボードの上に手を置く。ここのところ毎日そうやっているんだけれど、そこでぼくはいつも少しだけ考え込む。なんて書けばいいのだろう。どういうふうに書けば、みんなが読んでくれるだろう。今日ぼくは何をして、何を感じて、何を思っただろう。と。
 まあぼくとしてはそんなに毎日思うこともないと思っている。別に感情がないとかそういうんじゃなくて、すぐ忘れてしまうのだ。だから毎日ネタがなくて少しだけ悩む。けどそれでも、確かにぼくたちは一瞬のあいだにいろいろなことを思っている。友達が急に歌い始めたのを見て「大丈夫?」と笑いながら言ったあとに、別に急に歌いだすのはそんなに変なことでもなかったなうわなんてぼくは酷い奴なんだろうきっと彼はぼくのことを少しだけ嫌いになったに違いない。と、ほんの一瞬でそんなことを思うわけだ漠然と。それらはちゃんとした言葉にはなっていないけれど、確かに今日の午後7時頃、ぼくはそういうことを思っていた。
 「だからなんだ」と言われてしまえば「むぅ」と黙り込むしかないけれど、ぼくはとても重大なことに気づいたわけで。それはとても当たり前のことでもう本当に今更こんなとこで言ったところで何のあれにもならないけど、ぼくは気づいたので言おうと思う。
 それはつまり、日々の中にはこれといったものはなにもなさそうに見えて、実はなにかしら思い返すべきものがある、ということだ。今日あった出来事のなかでいったい何がそれなのかぼくにはよくわからない。けれど、ほとんどのお店が閉まっていたのにサンメリーだけは開いていて夜ご飯をちゃんと食べれたこととか、焼き芋やガムやスナックやいろいろなお菓子を塾に持ってきてくれる人のこととか、苦手だった数学がだんだん面白くなっていくことなんかは、そんな『思い返すべきもの』の中のひとつのように思う。
 そしてその『思い返すべきもの』をここに書けば良いんだと思った。思い出したり、それを文にしたりすると時間はかかるがそれはまあしょうがない。



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